あれ? アレは切るものでしたっけ? 緩めるものでしたっけ?
麻呂 「突然だが、手品を習得してみた」
テン 「へ〜、麻呂さんって意外に器用なんだね〜」
麻呂 「まぁな。これでも子供の頃のアダ名は、器用貧乏、略して貧乏だったからな」
テン 「それは本当に器用貧乏の略だったのか、謎が残る幼少時代ですね」
麻呂 「で、どんな手品から披露しようか?」
テン 「あ、色々と習得してきたんだね。
でも、ボクの方がそんなに手品に詳しくないからなぁ〜。
逆に聞くけど、どんな手品があるの?」
麻呂 「じゃあ、まずは当てる系の手品からいこうか」
テン 「当てる系?」
麻呂 「先に言っておくと、車を電柱に当てる系、とかじゃないからね」
テン 「それは分かってたつもりなんだけど、もしかして見くびられてるのかな」
麻呂 「昨日まで動いてた車が突然動かなくなる、という点でイリュージョンではあるんだけどね」
テン 「タネも仕掛けもハッキリしすぎてるイリュージョンだね」
麻呂 「そうじゃなくて、当てる系ってのは、
最初に選んでもらったカードを、オレが言い当てる、みたいな感じのマジック」
テン 「ああ、"このカードの束から一枚選んで、その絵柄を覚えて下さい"、みたいなヤツね」
麻呂 「そうそう。じゃあ、とりあえず、これを覚えて下さい」
テン 「何これ? 高校数学の参考書?」
麻呂 「55ページから83ページまでが今回の試験範囲です。覚えて下さい」
テン 「いやいやいや。観客に要求しすぎだろ。その"覚えて下さい" は。
そもそも、ここからどうマジックに発展していくんだ?」
麻呂 「テストのヤマを当てます」
テン 「それはただのヤマカンだ」
麻呂 「60%の確率で当たります」
テン 「しかも、誇れる程には当たってないし」
麻呂 「文句が多いなぁ……。
じゃあ、当てる系は置いといて、消失系マジックでもやる?」
テン 「お、消失系というと、一瞬で色々と消しちゃうマジックですか。
これは期待できますね」
麻呂 「では、この口座に入っているお金が一瞬で消えちゃうマジックをやります」
テン 「待って。おかしい。それダウト!!」
麻呂 「昨日まで動いてた車が突然動かなくなったんで、修理費として消えました」
テン 「電柱当てる系は実話だったのかよ」
麻呂 「日常にちょっとしたイリュージョンを仕込むイリュージョニストだからな。オレは」
テン 「自分に仕込んでも意味ないんじゃないかな。イリュージョニストとしては」
麻呂 「しかし、当てる系も消失系も不評となると、
残りは切断系マジックしか残ってないよ」
テン 「切断系? 人体切断マジックの事?」
麻呂 「そうそう。人体の一部を切断しちゃうマジック」
テン 「へ〜、でも、あれって結構大掛かりな道具が必要なんじゃないの?」
麻呂 「いや、オレの場合、道具は不要というか、もう既に切断しちゃってる」
テン 「え? もう切断しちゃってるの? ボクの体の一部を?」
麻呂 「うん。堪忍袋の緒を」